【書籍紹介】 誰のためのデザイン

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

最近、ユニバーサルデザインのボランティアに参加しています。そして、より深くデザインを理解したいと思っていたとき、後輩が貸してくれました。
インダストリアルデザインについての名著です。
多数の事例に基づいて、非常に優れた考え方やアドバイスが多数載っています。
特に印象に残ったのが、「自分を責めてしまうという誤り」家電製品やソフトウェア等が使いにくかったとき、ついつい人は自分を責めますが、実はそれ自体のデザインが悪いということ。Windows Vista、近年の過剰な機能が載った携帯電話やHDDレコーダーなどの電化製品の開発者は是非この本を一度読んでほしいと思います。
以下、すばらしいと感じた知見です。

  • 日常生活に関する知識の多くは、頭の中ではなく外界にある。例えば、駅の券売機を家で詳細に思い浮かべることは難しいけど、駅に行って実際に機械の前に立つと、使い方を自然と思い出して難なく切符を買えるとか。または文化的慣習に基づいて自然と使い方を推論すること。右矢印を見ると進むをイメージするとか。
  • 優れたデザインはそのものが操作を伝える(アフォーダンス)。文字の説明が不要。
  • 見ればわかること。可視性(visibility)
  • 良い概念モデル(メンタルモデル)とシステムの動作をあわせること。例えばクーラーのスイッチ動作等。
  • メンタルモデルは物事の説明を作り上げようという人の性質から生まれたもの。
  • 自然な対応付け。人が文化的慣習などで見につけた習慣に合った対応付けをする。
  • 技術の逆説。使いやすくするべく考え出された多数の技術が、かえって複雑なシステムを生み出し、操作を困難にすること。
  • デザインの手助けとしての行為の七段階理論、
  • 4つのポイント、可視性、よい概念モデル、よい対応付け、フィードバック
  • 頭の中の知識と外界の知識、そのポイント。情報は外界にある。極度の精密さは必要でない。自然な制約が存在する。文化的な制約が存在する。目の前から対象が消えれば、頭からも消える。
  • 不正確な知識に基づく正確な行動。何も見ずにキーボードのキー配列を思い出すことは難しいが、目の前にキーボードがあればタイピングは困らない等。
  • 事実についての知識(ofの知識、宣言的知識)と手続きについての知識(やり方)
  • 人間のミスの要因。スリップとミステイク。スリップは、習慣化した自動的な行動によりミスすること。うっかりファイル削除してしまうなど。ミステイクは、意識的に考えることにより発生すること。
  • デシジョンツリー。知識の選択幅と推論の深さ。日常は、幅は広いが推論が浅いか、推論は深いが幅が狭いのどちらかがほとんど。心理学者は、これらを意識せずに幅が広く深い推論のケースを中心に研究してきたため、研究成果を日常の作業への適用が難しかった。
  • 意識的でない思考はパターンマッチング。意識的な思考は、短期記憶の容量制限を受ける。
  • 良いデザインへの示唆:必要な知識は外界へ置いておく。人工的な制約を利用する。実行と評価の関係を可視化する。
  • 良いデザインの多くは進化する。それを阻害しデザインをひずませるのは、新製品としての目新しさを重要視した結果、過剰な装飾や機能の搭載などによる改悪。歴史ある製品のデザインに途中からかかわる人はその歴史を学ぶべき。
  • キーボードの歴史。qwertyキーボードは、一見キー配置が乱雑に見えるが、実は英単語を入力する上で、両手が入力内容をうまく分担できるようになっている。アルファベットが並んでいるキーボードは、打ちやすそうで実はどこでアルファベットが折り返しているか覚える必要があるため、学習に時間がかかる。結果として学習してしまえばqwertyキーボードの方が早く打てるとのデータがある。
  • 見た目の美しさを第一とすることはいいことではない。
  • 系統的にまとめることで複雑さに対処する。
  • 新しい技術の主たる役割は作業を単純にすること。

尚、著者の心理学者としての側面から記憶と学習について書いた本、

情報処理心理学入門1 感覚と知覚

情報処理心理学入門1 感覚と知覚

もお勧めみたいです。読んでみようと思います。